英競馬、時刻どおりでも勢いを失う

David Gravel
執筆者 David Gravel

イギリス競馬は時間通りに進行しているものの、依然として後れを取っているようです。英競馬統括機構(BHA)が発表した2025年第1四半期のレポートでは、ジャンプレースの充実やスタートの正確性といったポジティブな要素が見られる一方で、馬券売上や観客動員の減少、賞金の減額など、競馬界の中心を成す「心臓部」に疲弊の兆しが見られます。

ジャンプレース:堅調な成長

2025年のジャンプレースは好スタートを切りました。コア開催での平均出走頭数は前年の7.85頭から7.93頭に増加。プレミア開催では9.29頭から9.63頭と、より顕著な伸びを見せました。135以上のレーティングを持つハイレベルな競走馬も増加しており、トップクラスの質も改善しています。

フラット(平地)レース:苦戦続く

対照的に、フラットレース(平地競馬)は苦戦しています。コア開催における平均出走頭数は昨年の8.82頭から8.62頭に減少。出走促進のためのインセンティブが効きづらくなっており、賞金総額は300万ポンド(約4.5億円)も減少しました。オーナーや調教師にとっての魅力が薄れています。

その主な原因は、日曜夜の開催の減少や、賞金の高いグッドフライデー開催の再編にあります。週末開催の減少により、注目度も収益も落ちているのです。

問題は金銭面だけではありません。競技の「見せ場」やスター選手の不在により、平地競馬は単なる「平日昼の地味なレースの羅列」と化すリスクを抱えています。観る楽しさが乏しいのが現状です。

先月、英競馬界は政府に対し「業界信頼の崩壊が進行中」と警告。スマートで柔軟な規制がなければ、状況は「取り返しのつかないもの」になるとしています。

場外でも同様の傾向が見られ、全競技を通じた賞金総額は1.5百万ポンド減の3,240万ポンドに。その中でもジャンプレースは2,240万ポンドと好調を維持しましたが、フラットレースは1,000万ポンド(約11.6億円)に急減しています。

このような状況下で、イギリス国内から違法競馬賭博サイトへのアクセスが2021年以降で500%急増。BHAは、過剰な規制が賭ける価値を奪い、ファンを「黒市場」に追いやっていると警鐘を鳴らしています。

大口顧客が撤退、競馬界の屋台骨が揺らぐ

馬券売上は前年同期比で9%減少。見過ごせない落ち込みです。さらに深刻なのはその「中身の変化」。コア開催における1レースあたりの平均売上は14.4%の大幅減。プレミア開催では数字を維持していますが、それは逆に富裕層の購買行動が一部に集中し、それ以外の層が離れていることの裏返しでもあります。

高額ベッターはどこへ行ったのか?
多くが規制の厳しい国内市場を避け、海外の無認可ブックメーカーへ移行していると見られます。Racing Postの調査では、過去12カ月以内に3人に1人の高額ベッターが「無許可プラットフォームを利用した」と回答。これはもはや一時的な逸脱ではなく制度の抜け穴を突く新常態になりつつあります。

BHA(英国競馬統括機関)はすでに警鐘を鳴らしており、「規制強化と製品力低下の組み合わせは、顧客を“闇市場”へ追い込む」と警告しています。

カジュアル層は残っていても、売上は戻らない
「熱意はあるが財布の紐が違う」。Group 1(最高峰レース)のオーナーが去り、代わりに観客連合が入ってきたような構図です。

観客数は微減、だが兆候は不吉

表面的には大きな崩壊は見えません。総観客数は68.2万人から66.6万人へ微減。これは主にイースターのQ2移動やチェルトナムの1.1万人減が影響しています。

とはいえ、減少傾向はじわじわと続いており、安心はできません。

皮肉なのは、運営面では競馬史上最高の効率を実現していること。レースの時間厳守率はわずか2年で72.7%から87.6%へ向上。オフコースや配信視聴環境も改善しています。

しかし、「時間通りの発走」だけでは観客席は埋まりません。人を呼ぶには「物語」や「熱気」が必要です。

整ったスケジュールだけでは勝てない

今四半期の運営は整然としており、うまく管理されていました。
しかし、競馬という「商品」は、磨かれた外見だけでは走り続けられません。
開催日程の試行によって進行のスムーズさは改善されましたが、それだけでは競馬を次のステージへ押し上げることはできません。必要なのは、関与(エンゲージメント)、インセンティブ、そして競技としてのアイデンティティです。

今の英国競馬は、訓練された馬が間違った方向へ駆けているような状態に見えます。
成績表は「前進」を示していますが、パドックでは「不安」がささやかれています。2026年の開催カレンダーはすでに視野に入りました。
もし競馬界が、ファン、馬主、ベッターと再びつながる気が本気であるなら、時間を確認するのではなく、自らの“脈”を測るべきです。

広い視野で見れば、馬の頭数が減少している現実もあります。3月31日時点での現役馬の総数は15,359頭から15,070頭へと、前年比で1.9%減少。
馬が少なくなれば、出走頭数の維持、レース計画、そして競馬の長期的な成長に支障が出ます。

それでも、希望はあります。
135以上のレーティングを持つジャンプ馬(上級馬)の数は増えています。
開催日程の試行も新たな発想を持ち込みました。
Q2には、英国競馬界は2026年の開催計画の本格策定に深く取り組むことになるでしょう。
うまくいっていることを確立し、そうでないことを見直す絶好の機会です。

英国競馬はこれまでになく構造化されていますが、それゆえに“無味乾燥”になるリスクもはらんでいます。
このスポーツが、単なる「カレンダー上の存在」で終わらないためには、
スケジュールの整備だけでなく、「心を動かすストーリー」を取り戻す必要があります。

データは前向きな兆しを示していますが、競馬というゲームの“心臓”はまだ目覚めていません。
Q2はすでに全力疾走で始まっています。

問題は、競馬界がその手綱を再び握れるかどうか。
いま必要なのは、新たなスプレッドシートでも日程の微調整でもありません。
必要なのは、「芯」と、再びベッターたちの心を動かす理由なのです。

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